猟盤日記20170604

汚レコード展を見に東陽町ダウンタウンレコードへ。レコードジャケットなどに書き込まれた落書は独特の魅力があるもので、ハードオフなどでいい感じの書き込みのあるレコは思わず買ってしまうことも少なくない。そうしたレコードを「汚レコード」として存在を認めていこうというのが、この企画の趣旨らしい。落書きは大体査定を下げるものでしかない。ダウンタウンレコードでは、いい感じの「汚レコード」は積極的に評価して、時には査定にプラスしていこうというのだ。レコードの面白落書きにニヤニヤしたことのある人なら、なるほどと頷けるはずだ。自分のレコード棚にもそういう理由で買ったレコードが何枚かあったので、良い機会なので店長に査定してもらうことにした。

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松本伊代「ポニーテールは結ばない」

右上に〝裏面大よい〟と書かれているが、B面が特に良い曲という訳ではなく、残念ながらこの方とは意見は合わないようだと思いつつジャケ裏側を見ると

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「今日も一日元気で下 、毎日々大切な日び」と謎のポエムが。水着の上にノースリーブを着た伊代ちゃんとも相まって、思わずほっこりしてしまう。「裏面大よい」とは、B面のことではなく、このポエムと写真のアートワークのことだったのだなと膝を打った。

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フィルム スタジオオーケストラ「シェルブールの雨傘

相合傘のドヌーブとカステルヌオーヴォの上に描かれた雨筋を罫線に見立てて手紙を描いた小粋な汚レコード。よく見るとこの雨筋も自分で万年筆で書いてるっぽい。劇団に入って初公演を迎えた〝えんちゃん〟のために〝おしら〟の考えた気の利いたお祝いだが、これが私の手元にあるということは、おそらく〝えんちゃん〟にとってはありがた迷惑だったのかもしれない。映画のような切ない余韻を残す汚レコードだ。

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岡田有希子くちびるNetwork

ジャケに黒々と描かれた黒い痕跡に思いを馳せずにいられない一枚。あの日勢いに任せてユッコに捧げたメッセージを、翌朝反省して丁寧に塗り潰したのだろうか。この黒の奥に秘められた心の傷の大きさを思わず想像してしまいそうになるが、やはり彼もこのユッコを手放して新たな恋をはじめたのだろう。すべては時が癒してくれるのだ。

これら3枚を店長は200円で買取ってくれた。同盤の通常買取価格の20倍だという。

これに600円足して1枚レコを買った。

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森光子「時間ですよ〜東京下町あたり」

ヤマタケのソフトロックに、可愛らしい森光子のボーカルが絡む。店長は「私、これ聴いて森光子のこと好きになっちゃいましたよ」と。その一言だけで即購入を決めた。

東京下町あたりにしかない、あたたかなレコードトレードに触れた気がした。